本のなる樹が、パリにある

このブログは書評、読書日記、本の備忘録です。 - arbre à livres -
大脱出――健康、お金、格差の起原
大脱出――健康、お金、格差の起原

アンガス・ディートン (著) 松本裕 (訳)

\ 4,104 (みすず書房)



経済学書としてはかなりキャッチーなタイトル。数年前のスタローン&シュワルツェネッガーの刑務所脱出を描いた映画「大脱出」がありましたが、本書は1963年のスティーブ・マックーン主演の映画「大脱走」にちなんだタイトルだ。この映画は第2次世界大戦下、ドイツの捕虜収容所からの脱出を企て、前代未聞の総勢250人が集団脱走する。ところが、逃げおおせたのは一部の兵士で、多くは再び囚われ死を迎える。収容所とは、今の世界では「貧困」をさす。脱出できなければ死が待っている。
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 本:経済・社会 コメント(0)
市川崑と『犬神家の一族』


市川崑と『犬神家の一族』

春日太一 (著)
新潮新書
¥710(税込8%:¥778)



春日太一の本は面白い。今回は50年代・60年代の映画黄金時代の巨匠・市川崑をテーマにした一冊だ。表題にもある「犬神家の一族」は当時話題になった角川映画の第1作だった。新機軸を打ち出そうとする角川春樹の意向をはるかに超えて、横溝正史原作のミステリーは見事にスタイリッシュな映像と卓抜なキャスティング、和田夏十の脚本によって名作となった。

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 本:映像・シナリオ コメント(0)
骨風


骨風

篠原勝之 (著)
新潮新書
¥1,295(税込8%:¥1,399)



自称ゲージツ家のクマさんこと篠原勝之は、じつに文章がいい。定食屋でうまい飯だなぁと思って食べていると、作り手は相当な腕も後主だったという本だ。本書は8編からなる短編集で、私小説風で貧乏が描かれるが、しみったれた感じはない。情感はあるが湿っぽくはなく、過剰な表現は避けられ、淡々と語られている。それでいて、読み終えたあとには、言葉がずっしり響いてくる。

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 本:小説(国内) コメント(0)
ぼくたちは戦場で育った サラエボ1992─1995


ぼくたちは戦場で育った
   サラエボ1992─1995


ヤスミンコ・ハリロビッチ (著)
千田善 (監修), 角田光代 (訳)
2,100円 (税込8%:2,268円)



戦争という言葉にどれほど敏感か。それは人によって異なる。少なくとも身をもってをを感じられる人はごくごく少数だ。この本は、旧ユーゴスラビアの内戦のとき、幼少期を戦地で暮らした人々の言葉を集めたものだ。160字というツイッターほどの短文をつのり、1000余りを集めて本にしてある。
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 本:ノンフィクション コメント(0)
キルギスの誘拐結婚

キルギスの誘拐結婚

林 典子 (著, 写真)  
ナショナル ジオグラフィック (編集)
¥ 2,600 + 税   日経ナショナルジオグラフィック社



中央アジアの国キルギスには、「アラ・カチュー」と呼ばれる誘拐婚があるという。誘拐された女性たちを撮ったフォトルポルタージュがこの写真集だ。写真そのもの以前に、タイトルからもうかがえる事実が特異性や重さがまず突き刺さる。写真を見ると、誘拐された女性たちの表情、それとは乖離した周りの人々の顔や態度、どこか荒れた印象のある中央アジアの風景が、また胸に刺さる。

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 本:写真集 コメント(0)
神秘 白石一文

神 秘

白石 一文 (著)
¥ 2,052  毎日新聞社


白石一文の小説は、男の話だといつも思う。同性ではあるが、そこがついていきにくい部分でもある。権力構造のなかにあり、理屈っぽく、おおむね腕力があって、セックスに長けている。ついていきにくいが、ページは繰ってしまう。どんどん繰ってしまう。気がつくと何冊も読んでいた。

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 本:小説(国内) コメント(0)
緑色のうさぎの物語


緑色のうさぎの話

道尾 秀介 (著), 半崎 信朗 (イラスト)
¥ 1,382   朝日出版社

推理・ホラーなどを手がける直木賞作家の道尾秀介が、デビュー前の17歳の冬に書いたという童話。これにミスチルのPVを制作した半崎信朗が絵を添えて、一冊の絵本になった。
“みにくいあひるの”を思わせる導入部から、途中で物語は意外な方向へ転換。やや陰惨な匂いを残しながら、結末へとなだれ込む。結末といっても、物語が収束するのではなく、ぽんっと放り出されたまま終わってゆく。それがこの本の持ち味だ。
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 本:画集・絵本 コメント(0)
船の旅 南桂子

船の旅: 詩と童話と銅版画
南桂子の世界


南 桂子 (著)
¥ 2,484  筑摩書房



銅版画家、南桂子が描く童話と版画の本だ。没後10年、その不思議な味わいの世界はかえって広がりを見せているようにも感じられる。夫は世界的な版画家の浜口陽三、真っ暗な背景に浮かび上がる鮮烈で鮮やかな世界は印象的だ。その夫の陰に隠れた印象もあった南だが、哀感をはらんだ抒情的世界に共感を寄せる人が多かったのも事実だ。私もその一人である。
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 本:画集・絵本 コメント(0)